丹治会長が養鹿と鹿産物開発の成果品利用について提案
2019年7月7日
6月23日に東京都獣医師会創立70周年記念功労者の表彰を受けた丹治藤治会長(89歳)は、これまで47年間にわたってシカ資源の育成と利用に取り組んできた活動を振り返り、今後のシカの資源利用をめぐる課題について以下のような提案を発表しました。1. |
1992年に農林水産省が特用家畜に指定したシカの飼育に取り組むにあたっては疾病・衛生管理対策が絶対的に必要であり、獣医師や畜産関係者の参加が不可欠である。現状でも、捕獲や一時飼育したシカの資源利用にあたって獣医師の出番なくして、シカが媒介するマダニによるウイルス感染という迫りくる危機に対応することができない。将来的に畜産経営として特用家畜のシカが飼育されることも想定しながら、捕獲や一時飼育段階にあるシカの衛生管理対策に今のうちから本腰を入れて取り組んでいく必要がある。
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2. |
現状で捕獲したシカの資源利用はジビエ(食肉)主体で、しかもその利用は捕獲したシカの1割程度に過ぎず、捕獲現場に埋めるか捨て置かれる例が圧倒的に多く、森林環境の汚染を招いている。今後は害獣とされる野生シカを地域資源(宝)ととらえて、全身の資源利用を図っていく必要がある。その際に、食肉の薬膳利用や幼角(鹿茸)の漢方利用など、人生100年時代に向けて健康と長寿を実現する製品づくりを復活していく必要がある。
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3. |
平成18(2006)年まで続いた中国の養鹿・漢方研究者らとの技術交流によって、製造技術を取得して開発した幼角製品の「気快」(健康酒)「鹿丹」(カプセル状の健康食品)の復活を図りたい。中国の奇錦峰氏(当時、内蒙古医学院薬学部)による効能の検証結果や製造技術などに関する関連資料を公開し、幼角製品復活に向けた連携先や賛同者を募りたい。
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4. |
平成18(2006)年度に全日本養鹿協会が、国民・消費者とともにシカ産業の振興に取り組んでいくために、組織改革と事業活動の新ビジョンを策定したが、その構想を再検証し、「森と鹿との共存」によるシカ資源利用の活動のあり方について考え、新組織への移行も視野に入れながら実行に移していきたい。
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5. |
中国との技術交流の中で寄贈を受けた中国発行の重要技術書(以下2点、そのほかに関連映像もある)を開示し、その内容を共同利用していきたい。 ・『鹿科技術資料総偏 鹿茸』(中国語版/1,150頁、1985年出版) ・『鹿産品開発利用 鹿茸片』(中国語版/205頁、1994年出版) |
6. |
畜産雑誌『Stock』(現在は廃刊)で連載した「資源動物としてシカ類」を電子書籍として今後公開予定である。主な記事としては以下の通り。 ・1989.2.24号 養鹿事業と産物利用 ・1989.4.14号 老齢化社会の機能性食品と鹿茸 ・1989.5.12号 鹿の生理生態 |