平成31(令和元)年度の活動方針について
2019年4月15日
日本鹿皮革開発協議会
会長 丹治藤治
(株)カルタン代表取締役
会長 丹治藤治
(株)カルタン代表取締役
新元号「令和」が発表となった。その典拠とされる日本最古の和歌集『万葉集』には、シカを詠った歌が68種ある。シカの鳴き声を詠んだものがほとんどであるが、人里離れた山奥に定住するシカを身近に感じ取りながら暮らし、時折その資源も大切に利用してきた日本人とシカとの関係史をうかがい知ることができる。しかも万葉集の和歌の背景には中国の漢詩の世界があり、中国との交流史なくして日本の文化や生活を語ることはできない。
平成の30年間は養鹿が取り組まれてきた歴史とほぼ重なっている。その遺産を令和の時代にどう引き継いでいくのかが大きな課題となっている。
平成から令和への橋渡しを5月1日に迎えるにあたり、その所縁となる文献である『万葉集』で最も日本人に親しみのある動物として描かれているシカに焦点を当てていくのには絶好の機会である。
協議会ではシカ資源の持続的な利用にあたって大前提となる養鹿への道拓きに向けて、先頭に立って取り組んでいく決意である。そのために、今年度はその遺産を引き継いでいくための賛同者を広く募集し、推進のための体制づくりと具体的な計画づくりに本格的に取り掛かりたいと考えている。
1. |
北海道・福島県(東和町)・熊本県におけるこれまでの実践を基礎に、シカの資源利用と養鹿の再興に向けた動きをこの3地域から起こし、3地域が連携しながら全国に発信していきたい。 <北海道> 現在、捕獲したエゾシカの一時飼育と資源活用を結び付けた実践も行われており、かつて鹿追町などでは地域をあげて養鹿を軸にシカの産業おこしに取り組んできた伝統がある。 <福島県東和町(現・二本松市)> 全日本養鹿協会の指導のもとで地域をあげて養鹿に取り組み、中国との畜産技術交流においても、中国固有種の梅花鹿を寄贈されるなど、日中畜産技術交流の始まりの地といえる地域である。東日本大震災および福島原発事故被災地として風評被害といまだに格闘している地域でもあり、新たな産業おこしによる地域再興がどこよりも求められている地域である。 <熊本県> 北海道や福島県同様に、シカの資源利用に関する取り組みが、県を挙げて取り組まれてきた地域であり、とりわけジビエ料理や加工食品の製造に関しては先進的に取り組みが行われてきた。地元に棲息するキュウシュウシカは、ニホンシカのなかでも印伝などの革製品に最も向いた品種であり、今後の製品開発が期待される。 |
2. |
当面は福島県二本松市(旧・東和地区)に、福島県の災害からの復興祈念と日中畜産技術交流の流れのなかで中国から寄贈された梅花鹿の供養を目的とした交流広場(筑波大学芸術学類・柴田良貴教授が2011年に復興を祈念して創作した「故郷」の寄贈を受けて展示予定)の建設に向けて地元の協力を得ながら取り組んでいきたい。
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3. |
シカの資源利用について最も活発な動きがある北海道においては、これまで30余年にわたって全日本養鹿協会・日本鹿皮革開発協議会が蓄積してきた遺産を引き継いでいくために、養鹿や資源利用に関する技術・知識の開示や製品の展示などを行うイベントを今年の10月頃に行いたい。
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4. |
以上のような取り組みに向けて、これまで蓄積してきた文献・資料(中国からの寄贈文献を含む)や写真・映像(ビデオ)などを整理し、必要に応じて電子データ化し、希望者が閲覧できるシステムを準備したい。
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5. |
こうした整理した遺産を元に、今後の資源活用や養鹿に向けた動きをつくっていくための勉強会(一日塾)を、3道県(北海道、福島、熊本)を軸に展開していきたい。
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6. |
以上のような動きをすすめて行くにあたっては、2006(平成18)年度にNTTデータ経営研究所のコンサルにより立案した「シカ資源活用産業の確立に向けて 活動計画案」の精神に立ち戻り、国を挙げた動きに展開していくための方策と体制づくりをすすめていく必要がある。
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<追伸>
養鹿やシカの資源利用に関する文献・資料の一覧等については5月に掲載予定。