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日本の文化と鹿

日本国土は、景観豊かな森林草原野に鹿を含めた多様な動物が生息しています。日本鹿や杉などは共に貴重な日本在来の資源の一つであり、古代から産物利用や信仰の対象となって日本人の心・技・匠を融合洗練させてきた歴史があります。

鞍襦(くらじき) 革履の衲御礼履(のうのごらいり )

鹿皮革の歴史

鹿皮は古くから、馬・牛皮などよりも加工しやすい生活用品として、柔軟で丈夫な革紐や皮膜素材などに使われました。日本列島がかたちづくられた後の集落跡からは獣皮・樹皮・藁編みの甲冑と想像されるものが出土しており、鹿皮を武具へ利用したのは弥生時代に始まったと言われています。西暦500年頃になると韓国の革工人たちによる皮の加工技術が日本に伝えられ、その後は長い歴史文化と多くの工夫経験を積み重ねて、日本鹿を使った日本独自の皮革製品が創り出されてきました。
 この時代の革染めは、黒漆、朱漆に薫(ふすべ=煙染)ぐらいでしたが、平安時代になると、祭礼や、武道具の材料として、画革地、重複染革が登場して革染が開花しました。染めは、衣服や調度品とする布綿などに、色や文様を付けることから始まり、染革素材は鹿革のみが使用されるようになりました。特に鹿革において最も知られているのは、藍染革、燻革、菖蒲革、やわた革、紋革が有名です。西暦1368年に創作された菖蒲革は、藍地に白く菖蒲の葉や花模様を染めた革の鞣革です。菖蒲は、勝負または尚武に通じることから縁起が良いとして、好んで武具として用いられました。
 16世紀中期以降は、フィリピン、台湾、インドシナ、中国、ニュージーランドなど海外から鹿皮を輸入し、鹿革細工など多様な製品にしています。自然からの贈り物として貴重であった鹿皮革は、日本人の生活と密接にかかわりながら、鹿皮革の特性を用途よって使い分け生活用品や伝統工芸品に生まれ変りました。現在でもライフスタイルの変化に合った身体に着ける日本鹿製品の開発が求められています。

鹿皮小史

712年 平城京に西と東市場開設(貨幣経済の始まり)鹿毛皮、シルク
719年 衣服令発布。官位別貴族衣裳が区分頒布(ヒレ)ファッション、鹿革
752年 天平異国文化の交流と伝統技術による鹿革模様染作品つくり
780年 律令で鉄甲から鹿革利用で鎧・武具となる。
927年 漬染革が租税対象に(朝廷経済)朝廷に献上。その後、全国の染革が普及
1281年 画革の最終着装者は肥後国竹崎季長氏戦功を画にした「蒙古来襲画詩」
1351年 鹿革天平模様染が地域産業の振興として奨励された。
1988年 中国農業科学院特産研究所(鹿)と鹿産物開発の技術交流を開始(長春
1994年 第1回日本中国合同による鹿産物開発交流会開催(北京)
2010年 日本鹿革エコマーク第1号登録と奈良遷都1300年記念祭鹿革衣装

鹿皮革の用途

古代~江戸時代の鹿革の主な用途(写真)

鎧・兜・刀・矢筒の紐・飾り・クッション、小物用袋(煙草、巾着、鼻緒など)、蹴鞠、革足袋、手甲、革羽織、火事装束・半天などに使われていました。

革手袋・革足袋 巾着・袋物
   
革羽織・火消し半天 蹴鞠

現在の鹿革製品

鹿皮革は衣料用品、袋物用品、バッグ・小物用品、靴用品、スポーツ用品、剣道・弓道用品の素材、ならびに宝石・眼鏡・漆器の袋や拭きもの、ピアノ部品、印伝革製品などに使われています。

セーム革 化粧用セーム革
   
印伝 バッグ
   
ジャケット
ジャケット
   
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